琵琶の修理

ヤフオクで落札した5絃の筑前琵琶(ジャンク)の修理記録を残そうと思います。

筑前の5絃琵琶は、明治43年ぐらいに特許化して明治45年に完成させたそうです。

構造的には、4絃の琵琶より少し大きくして、薩摩琵琶と同じように表板の後ろに左右にわたる橋と根柱

を入れたあるのが特徴です。 4絃の琵琶が低音が鳴り響きすぎるので、高音が奇麗に響くための

改造や薩摩の曲も弾ける(胴うち)もできるのが発明時の売り文句だったとか。

大正時代に猛烈にはやって筑前の師匠は6000人にもなりました。 筑前琵琶の主流は5絃へとに

なりました。琵琶の製造も福岡地区で23人ぐらい、関東地区ではそれ以上いたらしい。 しかし、昭和に入り衰退し、昭和8年には琵琶大工は

5-6人に激減したそうです。 今は、筑前琵琶というと三田村さんぐらい。 とてもさみしい状況ですね。

筑前琵琶の値段も、三田村さんのサイトで150万円。 なかなか苦しいものがあります。

ということで皆さん中古を入手していますが、骨董屋さんで20-50万ぐらいでプラス修理や調整をして

使われています。 たぶん大正時期の琵琶が多いののでしょうね。

さて、落札した琵琶です。

こんな状況です。 ヤフオクだと状況がわからないのでほとんど博打状態になります。

入手したものをチェックしたところ、割れやひびはなかったですし、腹板の桐もしっかりした状態です。 かなり汚れがあるものの

木が劣化してはいない感じです。 保管は埃っぽい、蔵みたいなところだったでしょうか? 埃がかなりあります。

また、白壁に立てかけていたような傷もあります。 裏面はちょっと光沢が抜け野ざらしされていたような雰囲気もあり。

部品の欠品は、ふくじゅの左右の飾りと糸受けの象牙飾りの一部かけ、それから柱が一本ないです。

ということでこれから、それを修理していこうと思います。

ちょっとみずらいのですが、ヤフオクでこの琵琶を買った理由が、橘式のハンコがついていること。

天神の裏には、橘の紋が三つ焼印されています。

さらにふくじゅの下にも橘の紋が1つ、でも焼印が上手でない。 素人が押したのでしょうか?

五弦琵琶は特許ということもあり、琵琶大工さんは琵琶を作ると宗家まで持って行って検品してから印を押してもらったそうです。

なのではずれが少ないそうです。 印がある琵琶を落札したのはそんな理由です。

印は宗家のどなたかが焼いたのでしょうね。

ふくじゅが取れて中覗ける機会もあまりないので、陰月から中を探ってみました。 ふくじゅの下に槽が接続しているとあまり鳴らない

のだそうです。 ちなみにこの琵琶の場合はふくじゅの下半分ぐらいから槽の板と接していました。

ちなみに、唐木系の琵琶だと落とした時に割れやすいのでかなり槽がふくじゅの位置まできているとか?

そういえば、前に薩摩琵琶をみた時はふくじゅの下は空間がありました。

それから槽の下部分にも、印があります。 こちらは橘式とあります。

ちなみに落札した琵琶の材質ですが、たぶん桑だと思います。 筑前琵琶の槽や棹、糸巻きの材質は桑が最上とされて

いますがそれ以外に桜、花梨、紫檀、欅などがあります。 桑・欅とその他の木では模様が違うので判別できます。

桑は欅より緻密なのでこれも見分けられるので、桑との判断です。 花梨の琵琶の製造も多いようですが、こちらは重量

が大分重くなります。 いわゆる5Kg超の男琵琶。 今回の琵琶は3.7Kgでした。

下記は槽の中心部。 スでも入っていたのでしょうか。 別の木で止めてあります。

柱の状態です。 柱に糸の跡が。。 それから継ぎ手には鉛筆書きが残っています。 中心線と一号という文字が

天神の象牙にも糸の跡が。。。

ふくじゅの象牙部品にも糸の跡が。。。

かなり使いこんだ様子。

でも腹板には、撥傷があまりありません。

上級者が利用していたのでしょうか?

天神のところの継ぎ手の写真です。 薄い板が張り付いています。 琵琶の継ぎ手はこのように遊びを薄い板で調整

しているのが多いみたいです(良質の琵琶をあまりみたことないからかもしれません)。

三味線の中継ぎはとてもきれいにできているのと比べるとちょっと。。 筑前琵琶が中継ぎ形式にしてから、衰退するまで

あまり年数がないこと、急激に人気がでたので大工さんが琵琶職人に転職したケースが多かったそうです。

そう考えるとそういった技術が完成するまでに至らなかったということでしょうか。

三味線は金細など美しい工作がありますね。 製造の歴史の重さを感じます。

さて、修理にかかる前の整理。まず古い糸をはずして。

糸巻きはとても丁寧に作ってあります。 天神との噛み合わせも問題なし。

糸巻きに番号を振ります。 琵琶によっては、しるしが付いているものもあるのですが、これは付いてなかった。

天神の先が欠けてます。 これは最後に修復します。

ふくじゅの裏側。とても奇麗に作ってあります。 柱もちゃんとついています。 これは角材ですね。

角材の材質は桑っぽいです。 一説によるとこの柱はそれほど音色に関連しないとか。 琵琶は前に引っ張る力が

つよく他の楽器のように下に働く力がすくないので、ほとんどの振動はふくじゅの付け根から腹板に伝わるのだそうです。

棹の部分、欠品した柱のところに桑の端材を置いてみました。 これで柱を作る予定です。 この桑材は以前に糸巻き

作った時のあまりです。

竹の部分は尺八のあまりの竹でまずつくります。 本当は、煤竹なのでどうするか検討中。 煤竹調達するなら

全部交換した方がいいけど、ちょっと面倒ですね。

まず、半月を外します。 一つは簡単にとれたけど、もうひとつは取れない。

アイロンであたためてとることにしました。

はずれたら、なんとゴム系のボンドで付けてありました。 前のオーナが自分でつけたのでしょうね。

次はふくじゅの修理です。 使うのはこの三味線の撥。 昔ヤフオクで落札したものです。 握りの部分で撥先をつくりました。

写真の虫食いのような部分は、猪目を修理した時にくりぬいた跡です。

修復後の写真です。 色あいが違うので猪目のかざりは色の段差ができちゃいました。 触った感じはつながってはいるの

ですが。ついでに半月も磨きました。 猪目も半月もぴかぴかです。 奇麗な象牙の模様が浮き出てきました。

木部は磨いたあと、自作の蜜蝋ワックスで仕上げてみました。